
SHINGO KOKUBUN
國分 晋吾
地域探究コーディネーター/ LAMPS株式会社 代表取締役
地域を教室に。社会を教材に。
自分らしさを取り戻し、大人になるのが楽しみになる。
そんな出会いを、地域の中につくる。
地域の人、産業、文化、暮らし、社会課題を学びに変え、学校・企業・行政・地域をゆるやかにつなぐ。子どもや若者が、未来に本気で向き合う大人たちと出会い、自分と社会の可能性を発見する「地域探究」を、事業構想からプログラム設計、関係者の巻き込み、ファシリテーション、実装まで一貫してプロデュースしています。
Profile|プロフィール
地域にある人、産業、文化、暮らし、社会課題を、人が育つ教材に変える「地域探究コーディネーター」。
2005年に株式会社リクルートへ入社し、企画営業と人材育成に従事。2008年の独立後は、教育、組織開発、地域づくり、食、流通などの領域を横断しながら、人と地域の可能性を引き出すプロジェクトを全国で企画・実装してきました。
日本財団「海と日本プロジェクト」では、「海のごちそうプロジェクト」のプロデューサーとして、食を入口に海洋環境の変化を自分ごと化する全国事業を推進。各地域の社会課題を、商品開発、学校教育、地域産業、情報発信へと展開する地域モデルづくりに携わりました。
現在はLAMPS株式会社の代表として、三重県や北海道を主なフィールドに、高校生、学校、企業、行政、生産者、飲食店、地域住民などがともに学び、地域の未来をつくる「地域探究」の事業化に取り組んでいます。
大切にしているのは、子どもや若者を外側から変えることではありません。学校や日常の中では見えにくくなっている一人ひとりの興味、好奇心、感覚、得意な関わり方が、地域の大人や現実の社会との出会いを通じて表に出る場をつくること。子どもたちが自分らしさを取り戻した結果として、学びへの姿勢や人との関わり方、未来に向かう行動が変わっていく。そのプロセスを支えることを、地域探究の中心に置いています。
Philosophy|地域探究とは
地域の大人が本気で向き合う現場に、子どもたちも仲間として加わる。
私にとって地域探究とは、「地域を教室にして、社会を教材にする」学びです。地域には、教科書だけでは知ることのできない人、産業、文化、暮らしがあります。そこには、地域の大人が実際に困っていること、守りたいもの、変えていきたいこと、そして本気で実現しようとしている未来があります。
地域探究では、子どもたちのためだけに用意された仮想の課題ではなく、大人たちもまだ答えを持っていない現実の問いに向き合います。大人が一方的に正解を教えるのではなく、大人と子どもがそれぞれの経験や視点を持ち寄り、一緒に考え、試し、形にしていく。その接点をつくることが、地域探究で最も大切なことだと考えています。
地域探究の目的は、子どもを「変える」ことではない。
地域探究に参加した子どもが、自分から大人に質問したり、普段は話さない仲間と話したり、勉強への向き合い方を変えたりすることがあります。その姿を見て、私たちは「子どもが変わった」と表現することがあります。けれど、地域探究の目的は、子どもを外側から望ましい姿へ変えることではありません。
学校生活の中では、成績、学年、役割、人間関係などによって、本人が持っている興味や好奇心、感覚、得意なことが見えにくくなることがあります。一方、地域に出ると、これまでとは違う大人や仲間と出会い、年齢や成績とは関係なく、自分の関心を入口にして社会と関わることができます。そうした体験の中で、それまで表に出ていなかったその子らしさが、少しずつ見えるようになります。
私がつくりたいのは、子どもを変容させるプログラムではありません。子どもが自分らしくいられる環境をつくり、その子の中にすでにあるものが表に出る機会をつくることです。自分らしさを取り戻すと、結果として行動が変わる。変容は、こちらが与えるものではなく、その子らしさが表に出た先に生まれるものだと考えています。
自分らしく社会とつながることで、大人になることに希望を持つ。
地域には、未来のために一生懸命働いている大人がいます。仕事を楽しんでいる人。地域の課題に向き合っている人。自分の好きなことを仕事にしている人。失敗を重ねながら、それでも挑戦を続けている人。そうした大人と出会うことで、子どもたちは「社会には、こんな仕事があるんだ」「こんな生き方もあるんだ」「自分が好きなことも、社会につながるかもしれない」と感じ始めます。
その出会いは、勉強への向き合い方を変えるかもしれません。
部活動をもう少し頑張るきっかけになるかもしれません。
これまで苦手だったリーダー役に挑戦したり、普段は話しかけなかった人と話したり、自分の興味を誰かに伝えたりすることにつながるかもしれません。
地域探究のゴールは、地域について詳しくなることだけではありません。子どもや若者が、自分らしく社会と関わる方法を見つけ、大人になることや自分の未来に希望を持つこと。そして、その結果として、日常の行動が少しずつ変わっていくことです。
Origin|原点
人が変わるように見えるとき、その内側では「その人らしさ」が戻ってきている。
私が教育に関心を持った原点は、小学校5年生のときに出会った担任の先生でした。先生は、クラス全体を一括りにするのではなく、一人ひとりを見て、「君のここがいい」「あなたのここが素晴らしい」と、それぞれがすでに持っている「らしさ」に光を当ててくれる先生でした。
子どもたちを先生の考える理想の姿へ変えようとするのではなく、本人もまだ気づいていない良さや可能性を見つけ、それを言葉にして返してくれる。教師と生徒という関係の枠を越え、一人の大人として子どもと関わってくれるその姿に、私は強く影響を受けました。
八百屋は、教室だった。
株式会社リクルートへ入社後、営業として成果を上げること以上に喜びを感じたのは、自分が関わったチームのメンバーが、新しい役割に挑戦し、できなかったことができるようになっていく姿でした。ただ、振り返ってみると、メンバーが誰か別の人へ変わったわけではありません。本人の中にあった意志や強み、興味、責任感が、役割や仲間との出会いによって表に出てきたのです。
独立後、函館へ移住し、地域の大学生たちと八百屋「夢八」を運営しました。学生たちは、自分たちが好きだと思う農家を探し、その農家から野菜を仕入れ、自分たちで値段を決めます。そして、生産者の思いや野菜の魅力を、自分の言葉でお客様に伝えて販売します。正解の決まっていない本物の商いに参加すると、学校の中では見えなかった学生一人ひとりの姿が表に出てきました。
後から振り返ると、私にとって「夢八」は、八百屋であると同時に、一つの学校でした。教室の外にも学びがある。地域そのものを学校にすることができる。そして、地域や社会との出会いによって、人は自分らしさを取り戻し、結果として行動を変えていく。この実感が、現在の地域探究の原点になっています。
Expertise|専門領域
01 事業構想・コンセプト設計
社会課題を、「参加したくなる学び」に変える。人口減少、低利用食材、海洋環境の変化、地域産業の担い手不足など、複雑で伝わりにくい社会課題を、そのまま説明するだけでは、人はなかなか動きません。課題の背景を読み解き、地域にある可能性や魅力を見つけ、子ども、学校、企業、地域住民が「自分も関わりたい」と思える「自分ごととなる」コンセプトへ翻訳します。名称、ストーリー、体験、アウトプット、社会への伝え方までを一体で設計します。
02 関係者の巻き込みと座組設計
異なる目的を持つ人たちを、同じ未来へつなぐ。学校が大切にする学び、企業が持つ技術や人材、行政が目指す政策、地域住民が守りたい暮らし。それぞれの立場や目的は同じではありません。一方の目的を押し付けるのではなく、それぞれが参加する意味と役割を整理し、学校、企業、行政、大学、生産者、事業者、住民がゆるやかに関われる協働の仕組みを設計します。
03 地域探究プログラムの設計
体験を、問いと行動へつなげる。地域を訪問して話を聞くだけでは、学びは一過性の思い出で終わってしまいます。事前学習、現地体験、地域の大人との対話、チームでの探究、企画づくり、地域へのアウトプット、振り返りまでを一つの学習プロセスとして設計します。子どもや若者が「やらされている活動」から離れ、自分自身の興味や問いから動き始めることを大切にしています。
04 ファシリテーションと伴走
答えを与えず、その人らしさが表に出る場をつくる。ファシリテーションで大切にしているのは、予定された結論へ誘導することでも、参加者を望ましい姿へ変えることでもありません。一人ひとりの発言や違和感、まだ言葉になっていない興味、その人らしいものの見方を受け止め、対話を通じて表に出していきます。子どもだけでなく、教員、企業、行政、地域住民の間にある認識の違いも整理し、それぞれが自分らしく参加できる関係から、合意と実行を生み出します。
Selected Projects|代表的な実践
日本財団「海と日本プロジェクト」/ 海のごちそうプロジェクト
海洋ごみ、水産資源の減少、海水温の変化など、海ではさまざまな課題が起きています。一方で、海に関心がない人へ「海の課題を考えてください」と伝えるだけでは、関心や行動にはつながりにくいという難しさがあります。そこで、多くの人にとって身近な「食」を入口に、海の現状を知り、海の未来を自分ごととして考える「海のごちそうプロジェクト」を推進しました。
プロデューサーとして、地域の海の課題をリサーチし、食文化、商品開発、学校教育、イベント、情報発信を組み合わせた地域モデルを全国各地で展開。「おいしい」から興味を持ち、背景を知ることで、目の前の食事と海の未来がつながる。この経験は、現在の「社会課題を教材にする地域探究」へとつながっています。
北海道ブリリアントアクション
函館では、かつて地域の食文化を支えてきたイカやサケの漁獲が減少する一方、それまで地域ではなじみの薄かったブリの水揚げが急増していました。しかし、北海道ではブリを食べる習慣が少なく、地域で獲れたブリが地域で消費されにくいという課題がありました。
プロデューサーとして、料理人、漁業者、加工事業者、飲食店、小売店、学校、行政、メディアなどをつなぎ、ブリを「海の変化を伝える教材」として地域に実装。函館ブリたれカツや函館ブリ塩ラーメンの商品開発、学校給食、食育授業、飲食店・スーパーとの連携、地域イベント、メディア発信などを横断して展開しました。2021年度には、ブリたれカツバーガーを2,569食提供し、ブリフェスでは飲食店・スーパー合計60店舗で12,550食を販売。学校給食では10校・3,000人以上の子どもたちに、海の学びとセットでブリたれカツを提供しました。
代表を務める一般社団法人Blue Commons Japanが開発した「函館ブリ塩ラーメン」は、令和4年度北海道新技術・新製品開発賞の食品部門で大賞を受賞しました。
三重県「みえごちそうアクション」
三重県の高校生が、生産者、事業者、飲食店、大学生、行政、地域の人たちとともに、地域で十分に活用されていない食材の背景にある社会課題を学び、地域に愛されるメニューを共創する地域探究プロジェクトです。高校生が商品開発を体験することだけが目的ではありません。なぜ、その食材は十分に活用されていないのか。生産者や事業者は、何に困っているのか。高校生が地域の大人と対話し、実際の社会課題に向き合いながら、企画、試作、発信までを行います。
事業全体のコンセプト設計、学校・行政・生産者・飲食店等の連携、事前学習の設計、現場でのファシリテーション、地域への発信を担当。商品を完成させることではなく、「この食材を応援したい」「この地域に関わりたい」という共感と関係を生み出すことを目指しています。
その他の地域探究・スタディツアー
新渡戸文化高等学校の生徒が函館の地域プレイヤーと出会い、地域の魅力と課題を探究するスタディツアーや、新渡戸文化高等学校と三重県立津高等学校の生徒が三重県熊野市二木島で海、漁、食、暮らしを学ぶ「二木島サマーフィールドワーク」など、学校や地域を越えた越境型の学びも企画・伴走しています。
Vision|2030年に向けて
すべての子どもが「自分らしく社会と出会える」仕組みを。
家庭によって、子どもが出会える大人や、経験できることには差があります。だからこそ、学校のプロジェクトとして、家庭の経験やつながりに左右されず、できるだけ多くの子どもが地域や社会と接点を持てる仕組みをつくりたいと考えています。
地域探究を通じて目指しているのは、子どもたちを社会に適応させることではありません。一人ひとりが、自分らしさを持ったまま社会と関係を結べるようになることです。その出会いが、子どもたちにとって、今取り組んでいる勉強や部活動、日々の生活を頑張る活力になることを目指しています。
学校だけでなく、地域全体で子どもを育てる。
地域探究を、学校や一人の先生の努力だけで続けることはできません。企業、行政、大学、地域団体、地域住民が、「地域の子どもを育てることは、自分たちの役割でもある」と考え、継続的に関われるエコシステムが必要です。また、地域探究は教育施策であるだけでなく、将来の地域産業、担い手育成、関係人口、移住・定住、Uターン・Iターンにもつながる取り組みです。そのため、教育分野の予算だけに依存するのではなく、地域の未来に関わるさまざまな主体と財源が循環する仕組みをつくりたいと考えています。
地域の中で自分らしさを見つけた子どもたちが、いつかその地域と関わり直す。地域全体が一人ひとりの「らしさ」を支え、その「らしさ」が地域の未来をつくっていく。そんな循環を、地域探究を通じて実現していきます。
Career|経歴
- 2005年4月
- 株式会社リクルート入社。企画営業、人材育成、チームマネジメントに従事。
- 2008年9月
- 株式会社リクルート退社。
- 2008年10月
- 独立。企業の人材育成、組織開発、地域事業の企画・運営に携わる。
- 函館へ移住
- 地域の大学生とともに八百屋「夢八」を運営。商いの現場を通じて若者が成長する姿から、「社会そのものが教材になる」という地域探究の原型を見いだす。その後、地域づくり、食、流通、海洋教育、商品開発、地域プロモーション等のプロジェクトを多数手がける。
- 2020年4月
- LAMPS株式会社設立。代表取締役に就任。学校、企業、行政、地域をつなぎ、社会課題を教材化する教育支援・地域探究事業を展開。
Positions|現在の役職
- LAMPS株式会社 代表取締役
- 学校法人新渡戸文化学園 NITOBE FUTURE ADVISER
- 株式会社livmo 取締役
Awards & Media|主な受賞・メディア
代表を務める一般社団法人Blue Commons Japanが開発した「函館ブリ塩ラーメン」が、令和4年度北海道新技術・新製品開発賞 食品部門大賞を受賞。
YouTube番組「ReHacQ」に出演。気候変動によって変化する海や水産資源、ブリの食文化づくり、食を通じて海の課題を自分ごと化する地域プロジェクトについて紹介しました。
北海道ブリリアントアクション、函館ブリたれカツ、函館ブリ塩ラーメン等の取り組みが、NHK、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、北海道内テレビ局、全国紙、地方紙、WEBメディアなどで紹介されました。
Consultation|ご相談いただけること
企業の方へ
学校や地域と連携した教育・人材育成・地域貢献事業を、構想段階から設計します。企業が持つ技術、人材、商品、事業課題を、子どもや若者の学び、地域との共創、新たな社会価値へつなげます。
教育委員会・学校の方へ
地域探究、探究学習、スタディツアー、フィールドワーク、企業連携授業などを企画・設計します。地域との連携先開拓、プログラム設計、教員との役割分担、生徒への伴走、振り返り、成果発信まで一貫して支援します。
地域の事業者・団体の方へ
地域資源や社会課題を起点に、学校、企業、行政、大学、地域住民が参加する地域活性化プロジェクトを設計します。まだ課題や事業内容が明確になっていない段階から、対話を重ねながら企画を組み立てます。