Outline概要文
新渡戸文化高等学校×三重県立津高等学校「二木島サマーフィールドワーク」
三重県熊野市にある、小さな港町「二木島」。定置網漁を中心に海とともに暮らしてきたこの地域を舞台に、新渡戸文化高等学校19名、三重県立津高等学校4名、計23名の高校生による2泊3日の「二木島サマーフィールドワーク」を実施しました。
新渡戸文化学園は、これまでも二木島をフィールドに地域と関わる活動を続けてきました。今回のフィールドワークでは、そこに三重県内の高校生が加わることで、東京の高校生と地域との関係を、地元の高校生も一緒になって育てていく新たな形に挑戦しました。
3日間で行ったのは、スノーケリング、定置網漁、市場見学、水産加工、郷土食づくり、古民家調査、熊野古道の探究、地域住民へのヒアリングなど。あらかじめ決められた答えを探すのではなく、自分自身の興味や関心にしたがって地域へ入り、人と出会い、問いを見つけていく時間をつくりました。
学校も、暮らす地域も違う23人の高校生が、二木島という一つのフィールドで混ざり合う。地域を知るだけではなく、それぞれがまだ知らなかった「自分」に出会っていく3日間となりました。
LAMPSは、三重県内の高校生募集、学校間の調整、プログラムの設計、当日のファシリテーションから振り返りまでを担当しました。

Vision実現したい状態
地域を「学ぶ場所」から、自分が動き出す場所へ。
地域探究というと、地域課題について調べ、解決策を考え、最後に発表する。そんな学び方をイメージすることも少なくありません。けれど、地域にはもっと複雑で、人間らしくて、教室の中だけでは出会えないものがあります。
海に入る。漁船に乗る。魚が市場へ運ばれていく現場を見る。地域の人と一緒に昔の料理をつくる。古い家を歩いて調べる。漁師や地域住民の話を直接聞く。そのなかで「もっと知りたい」と思ったものに近づいていくと、普段は大人に自分から話しかけない生徒が質問を始めたり、いつもとは違う仲間と自然に会話を始めたりします。
今回目指したのは、「二木島について詳しくなること」だけではありません。学校を離れ、違う環境で育ってきた仲間や地域の人たちと混ざり、自分の興味や好奇心から動いてみる。そうすることで、学校生活の中だけでは見えにくかった一人ひとりの「らしさ」が表に出てくる。
地域まるごとを教室にして、まだ出会ったことのない自分に出会う。二木島を、そんな学びのフィールドにしていくことを目指しました。

Processプロセスデザイン
01 東京と地域の関係に、「地元の高校生」をつなぐ
新渡戸文化学園がこれまで育ててきた二木島との関係に、今回は三重県立津高等学校の生徒4名が参加しました。LAMPSは、三重県内高校生の募集、新渡戸文化高等学校・津高校との調整を担当。津高校の生徒に対しては、参加前の動機づけや事前のコミュニケーションも重ねました。
地域外の高校生だけが訪れる活動ではなく、三重県の高校生も当事者として関わる。二木島との関係を、地域側にも継続的に残していくための最初の一歩です。
02 まず、二木島の海へ入る
初日は、オリエンテーションを行った後、二木島湾でスノーケリングを実施しました。説明を聞くだけではなく、実際に海へ入り、自分の目で海中の景色を見る。地域の漁師と一緒に海を体験することで、これから3日間過ごす二木島を、まず身体全体で感じるところからプログラムをスタートしました。
海や漁を「学習テーマ」として眺めるのではなく、自分自身がその環境の中へ入ることで、地域への興味や疑問が自然に生まれていきます。

03 自分の興味から、地域の中へ入っていく
2日目からは、全員が同じプログラムを体験するのではなく、それぞれの興味・関心に応じてチームに分かれました。定置網漁を体験し、魚が市場へ運ばれ、流通・加工されていく過程を学ぶチーム。かつて二木島で食べられていた郷土食「エゴマのぼたもち」を地域の方と一緒につくり、地域の食文化を探るチーム。二木島の古民家や空き家の状況を調査するチーム。熊野古道を歩き、その歴史や地域との関係を探究するチーム。
さらに地域住民へのヒアリングを行い、資料やインターネットだけでは見えてこない、現在の二木島の暮らしにも触れていきました。

04 「知りたい」が、大人との対話を生み出す
フィールドワークを重ねるなかで、生徒たちの行動にも変化が現れました。最初は学校ごとにまとまっていた新渡戸文化高校と津高校の生徒たちが、次第に学校の境界を越えて自然に混ざり始めました。
さらに印象的だったのは、普段は大人に積極的に話しかけるタイプではない生徒も、自分が興味を持った分野の漁師や市場関係者、地域住民を見つけると、自分から質問し、話を聞き、新しい情報を得ようとしていたことです。「コミュニケーションを取らなければならない」から話すのではなく、「もっと知りたい」から、人に会いにいく。興味や好奇心が、生徒自身の行動を変えていきました。
05 本物の漁業と、その先にある仕事に触れる
3日目も、それぞれの関心に応じた活動を続けました。一つのチームは再び定置網漁へ参加し、その後、水産加工の現場を体験。漁ではクロマグロが網に入るという、現場ならではの出来事にも遭遇しました。もう一つのチームは三重大学を訪問。二木島での地域体験だけで閉じることなく、地域や海について関心を持った先に、どのような学びや進路があるのかにも触れる機会となりました。
二日目の市場見学でも、多くの関係者から魚の流通や仕事について直接説明を受け、生徒たちは海から食卓へとつながる産業の姿をリアルに捉えていきました。

06 3日間で終わらない、「次の問い」を持ち帰る
今回のフィールドワークでは、最終日に成果物を完成させたり、全員で発表会を行ったりすることをゴールには設定しませんでした。むしろ大切にしたのは、3日間で生まれた興味や問いを、その後へ持ち帰ることです。
津高校の生徒からは、「なぜ、こんなに魅力的な活動に三重県の高校生があまり参加していないのだろう」「もっと三重県の高校生が二木島に来るためには、何が必要なのだろう」という問いも生まれました。二木島を自分たちとは関係のない遠い地域として見るのではなく、「自分たちもこの活動を広げられるかもしれない」という視点が芽生え始めました。
Harvest収穫
学校の境界が、少しずつなくなっていった
初日はそれぞれの学校ごとに集まることが多かった生徒たち。しかし、海へ入り、漁を体験し、同じ地域の人たちと話し、食卓を囲むうちに、学校の境界は少しずつ薄れていきました。
普段なら出会うことのなかった東京と三重の高校生が、「同じ二木島を体験している仲間」として自然に関わるようになったことは、今回の大きな成果の一つです。異なる学校の生徒と過ごすことで、自分たちとは異なる考え方や価値観にも触れ、それぞれの視野が広がっていきました。

興味が生まれると、人は自分から動き始める
生徒たちは、漁師や市場関係者、地域住民と関わるなかで、自分の興味にひっかかるものを見つけると、自ら質問を始めました。一方で、二木島の人口減少や担い手不足など、地域の現実にも触れました。
魅力的な海や食、人との出会いだけではなく、「この暮らしをどう残していくのだろう」「自分たちにも何かできることはないだろうか」と考える生徒も現れました。地域の「良いところ」と「課題」を別々に学ぶのではなく、その両方が同じ暮らしの中に存在していることを、実体験として受け取る時間となりました。
「勉強」が、未来へ進むための手段になる
参加した生徒の中には、フィールドワーク後に、こうした活動をこれからも続けていくために、教科の勉強もしっかりして、学力を身につけたい、と話す生徒もいました。
自分がやりたいことや、もっと知りたい世界に出会うことで、「勉強しなければならない」から「自分の未来のために学びたい」へと、学ぶ意味が変わっていく。地域探究は、地域について学ぶだけの時間ではありません。自分がどんなことに心を動かされ、何をもっと知りたいと思うのかを発見することで、日常の学びや将来のキャリアを捉え直すきっかけにもなります。
「また関わりたい」が、地域との次の関係をつくる
3日間を終えた生徒たちから多く聞かれたのが、「二木島にまた関わりたい」という思いでした。地域側からも、高校生が定期的に訪れ、地域の人たちと一緒に何かに取り組んでくれることを歓迎する声が聞かれました。
これまで新渡戸文化学園が育ててきた二木島との関係に、今回、津高校の生徒が加わった。次は、さらに多くの三重県内の高校生へ。今回のフィールドワークを一度きりの体験で終わらせるのではなく、地域に近い高校生が継続的に関われる仕組みをつくり、将来的には熊野・尾鷲地域など周辺の高校へも輪を広げていくことを目指します。
その先には、翌年5月の地域のお祭り「ほうばい祭り」で、生徒たち自身が地域へ何らかの形でアウトプットしていく構想もあります。
Voice参加した生徒の声
新渡戸文化高等学校の生徒
もともと興味を持っていた漁業や水産業について、実際の漁や市場、加工の現場を見ることができました。普段の生活では見ることのできないリアルな現場に触れ、もっと知りたいという気持ちが強くなりました。
三重県立津高等学校の生徒
三重県に住んでいても、二木島にこんなに魅力的なフィールドがあることを知りませんでした。東京の高校生と一緒に活動したことで、自分たちとは違う視点や考え方にも触れ、物事を見る視野が広がったと感じます。