ネクストハイスクール構想・北海道の拠点校は岩見沢農業高校と有朋高校|協力校72校の全リストと事業計画を一次資料で解説

2026.07.14

「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」の改革先導拠点として、北海道からは北海道岩見沢農業高等学校(15.0億円)と北海道有朋高等学校(21.9億円)の2校が採択されました(2026年6月29日、文部科学省公表)。ただし、この事業に関わることになった北海道の学校は、その2校だけではありません。

採択結果が出たのは6月29日ですから、道内向けの詳しい続報はこれからです。2026年7月14日時点では、北海道教育委員会のお知らせ一覧にも、両校の学校サイトにも、まだ関連の記載はありません。「うちの学校が関係しているらしい」と検索しても、たどり着ける情報が限られているのが現状です。

手がかりは、文部科学省が公表した一次資料のほうにあります。採択結果一覧のPDFには、8ページの採択結果に続いて6ページの「協力校一覧」という別表が付いているのですが、この別表を掲載しているメディアも自治体も、確認できた範囲でひとつもありません。

そこに、この事業の輪郭を決める事実が載っています。北海道有朋高校の協力校は65校。全国の先導校のなかで、群を抜いて最多です(次点は静岡中央高校の約29校)。つまり北海道では、2校が採択されたのではなく、実質的に全道70校以上が当事者になったことになります。

※ 制度そのものの全体像は、3,000億円規模の高校改革を世界一わかりやすく解説した記事にまとめてあります。ここから先は、北海道でどの学校が何をすることになったのかに絞ります。

目次

結論:北海道の拠点校は2校。2校で3類型すべてをカバーしている

まず、文部科学省の採択結果一覧(第1回から第3回申請分まで)に記載されている、北海道の2行をそのまま表にします。

項目 北海道岩見沢農業高等学校 北海道有朋高等学校
学科等 全日制/農業科 定時制/普通科・商業科
通信制/普通科
事業計画名 持続可能な農林業及び地域産業を創造する農林業イノベーション人材の育成 多様な学習ニーズに対応した教育ネットワークモデルの構築/これからの経済・社会の発展につなぐことのできる理数的素養を有するイノベーション人材の育成
上限額 15.0億円 21.9億円
類型 類型1(アドバンスト・エッセンシャルワーカー等育成支援) 類型2(理数系人材育成支援)+類型3(多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保)
学力向上・学習支援 大学生や専門家等による学習支援の取組 大学生や専門家等による学習支援の取組
協力校 7校 65校(全国最多)
出典:文部科学省「令和7年度 産業イノベーション人材育成等に資する高等学校等教育改革促進事業 採択結果一覧」(2026年6月29日公表)より作成

注目してほしいのが類型の欄です。岩見沢農業が類型1、有朋が類型2と類型3を兼ねており、北海道はわずか2校で3類型すべてをカバーしています。多くの県が3校で3類型を分担しているところを、北海道は2校で成立させている。1校で2つの類型を持つ有朋高校の存在が、その理由です。

これは偶然ではありません。有朋高校の事業計画名が2本立てになっていることからも分かるとおり、「多様な学習ニーズへの対応」と「理数系人材の育成」をひとつの遠隔ネットワークの上で同時に実現するという設計になっています。後述しますが、これが北海道の計画の最大の特徴です。

【全国最多】有朋高校の協力校は65校──全道の高校が当事者になる

ここからが本題です。この記事でいちばん手間をかけた部分でもあります。

「協力校一覧」という、読まれていない別表

文部科学省の採択結果一覧のPDFは全15ページで構成されています。

  • p.1〜8:採択結果一覧(先導校等名・学科・事業計画名・上限額・類型・学力向上学習支援)
  • p.9:サマリー(採択都道府県数38、採択先導校等数75、学科別の内訳)
  • p.10〜15:協力校一覧(6ページ)

ニュース記事も、支援ベンダーの解説記事も、自治体の発表も、扱っているのはほぼp.1〜9までです。後半6ページの協力校一覧は、事実上読まれていません。ただ、現場からすれば「自分の学校の名前が載っているかどうか」がいちばん知りたいことではないでしょうか。

そこで、北海道の2校分を全件書き出してみます。数えるところからの作業でした。

岩見沢農業高校の協力校:7校

帯広農業高等学校(農業)、旭川農業高等学校(農業)、大野農業高等学校(農業)、札幌工業高等学校(工業)、札幌東商業高等学校(商業)、厚岸翔洋高等学校(水産)、美唄聖華高等学校(看護)の7校です。

ここで目を引くのが、農業以外の学科が並んでいることです。農業3校に対して、工業・商業・水産・看護が各1校。事業計画名は「持続可能な農林業及び地域産業を創造する農林業イノベーション人材の育成」ですから、「農林業」だけでなく「地域産業」を明示的に含めていることと符合します。

とくに美唄聖華高校(看護)が入っている点は、他県の農業系の先導校ではあまり見られない構成です。農業高校の拠点に看護科が加わる意味は、公表資料からは読み取れません。岩見沢と美唄という空知地域の近さを踏まえた地域連携、というあたりでしょうか。

有朋高校の協力校:65校(全リスト)

採択結果一覧に記載されている有朋高校の協力校を、原文の順に全件掲載します。

夕張(普通)、月形(普通)、芦別(普通)、蘭越(普通)、寿都(普通)、虻田(商業)、厚真(普通)、穂別(普通)、平取(普通)、福島商業(商業)、南茅部(普通)、長万部(普通)、松前(普通)、森(総合)、上ノ国(普通)、下川商業(商業)、美深(普通)、上川(普通)、苫前商業(商業)、天塩(普通)、豊富(普通)、常呂(普通)、津別(普通)、佐呂間(普通)、清里(普通)、興部(普通)、雄武(普通)、本別(普通)、池田(総合)、阿寒(普通)、弟子屈(普通)、羅臼(普通)、標津(普通)、利尻(普通)、礼文(普通)、函館中部(普通・理数)、江差(普通)、奥尻(普通)、檜山北(総合)、小樽潮陵(普通)、倶知安(普通)、岩内(普通・商業)、岩見沢東(普通)、滝川(普通・理数)、旭川東(普通)、名寄(普通・工業)、富良野(普通・農業・工業)、留萌(普通・工業・商業)、羽幌(普通)、稚内(普通・商業・看護)、浜頓別(普通)、北見北斗(普通・理数)、網走桂陽(普通・商業)、紋別(普通・工業・商業)、遠軽(普通)、室蘭栄(普通・理数)、苫小牧東(普通)、伊達開来(普通)、静内(普通)、帯広柏葉(普通)、大樹(普通)、釧路湖陵(普通・理数)、根室(普通・商業)、中標津(普通・商業)、札幌西(普通)。

※いずれも「高等学校」を省略しています。なお原資料では本別高等学校が2回記載されており、延べ66校・実数65校となります。一次資料を精読して初めて気づく点ですが、この記事では実数の65校で数えています。

この65校が意味すること

リストを眺めると、性格の異なる2つのグループが混在していることが分かります。

  1. 小規模校・離島・郡部の高校:夕張、奥尻、利尻、礼文、羅臼、天塩、雄武など。単独では理数系科目や進路希望に応じた選択科目を十分に開設しにくい学校群です。
  2. 各地域の伝統的な進学校:札幌西、旭川東、函館中部、室蘭栄、帯広柏葉、釧路湖陵、北見北斗、小樽潮陵、滝川など。理数科を置く学校も複数含まれます。

つまりこの計画は、「支援される側」の小規模校だけを集めたネットワークではありません。地域の中核校も同じネットワークに入っています。理数系人材育成(類型2)と多様な学習ニーズへの対応(類型3)を1校で兼ねる有朋高校の設計が、ここに表れています。

T-baseとN-E.X.T.が、ここで接続する

65校という数字の意味は、北海道の遠隔教育の経緯を知ると、はっきりします。

T-base(北海道高等学校遠隔授業配信センター)とは

北海道教育委員会は、令和3年4月、有朋高校にT-baseを開設しました。全国に先駆けた遠隔授業配信の専門拠点です。道教委の遠隔授業のページによれば、令和7年度時点の受信校は32校(地域連携校30校、離島の高校2校)です。

受信校32校 → 協力校65校という「倍増」

ここで、少し引っかかることがあります。

T-baseの受信校は32校。今回のN-E.X.T.事業で有朋高校の協力校となったのは65校。ちょうど倍増しています。

この事業は、ゼロから遠隔ネットワークをつくる話ではありません。すでに5年間動いてきたT-baseという実績のある基盤を土台に、その対象校を2倍に広げ、さらに理数系人材育成という新しい機能を載せるという構造です。だからこそ、小規模校だけでなく札幌西や旭川東といった中核校まで協力校に含まれている。従来の「小規模校を救済する遠隔授業」から、「全道の生徒に高度な理数教育を届けるネットワーク」へ、性格そのものが変わろうとしています

興味深いのは、道教委の遠隔授業のページにもT-baseの公式サイトにも、N-E.X.T.ハイスクール構想への言及がまだないことです。逆に、全国のN-E.X.T.解説記事はT-baseに一切触れていません。両者を接続して論じた記事は、確認できた範囲で存在しません。しかし現場の実態としては、この2つは同じものの続きです。

有朋高校の事業計画:「イノベーター理科・数学・情報」

文部科学省は採択結果とあわせて「先導校等の取組例」という資料を公表しており、そのp.9が北海道有朋高校の専用ページになっています。全国16校しか掲載されていない資料です。ここに、採択結果一覧には載っていない計画の中身が書かれています。タイトルは「どこにいても、『イノベーター理科・数学・情報』」

この改革が必要な背景

資料の原文は、こうです。

広大な道内の多くの小規模校では、単独で理数系科目や進路希望に応じた選択科目を十分に開設しにくい。住む場所にかかわらず全ての生徒が理系大学進学を目指せる体制づくりが急務

不登校経験や特別な配慮を要する生徒など多様な背景をもつ生徒(令和7年度時点50%以上)の増加により、時間や場所に制約されない学びや個別支援をさらに充実させることが必須

「多様な背景をもつ生徒が令和7年度時点で50%以上」。これは有朋高校(定時制・通信制)の実態を示す数字であり、類型3の申請根拠でもあります。北海道の広さという地理的条件と、生徒の多様化という2つの課題が、同じ計画のなかで扱われています。

新設される学校設定科目「イノベーター○○」

計画の中心は、新設の学校設定科目です。

  • 「イノベーター理科」「イノベーター数学」「イノベーター情報」を開設し、遠隔授業で配信
  • 「イノベーター理科」「イノベーター数学」では、「物理」や「数学Ⅲ」等の内容に加え、外部の大学教員や産業界の技術者(サイエンスエキスパート)から、実社会や先端技術と結び付けた内容を学ぶ
  • 「イノベーター情報」では、「情報Ⅰ」の内容に加え、データサイエンスや生成AIの活用を取り入れ、高度な情報活用能力を身に付ける
  • 遠隔授業の受信校の生徒であれば、どこに住んでいても高度な理数教育を受けられる

「n.e.x.t.ゼミ」と理数系人材育成コンソーシアム

  • 「n.e.x.t.ゼミ」:長期休業中に大学教授等が指導するゼミ。サイエンス・リテラシー、線形代数、サイエンス・コミュニケーションなど、通常授業より一歩進んだ内容をオンラインで開催。生徒が自らの興味・関心に応じた探究や、卒業後の進路先につながるテーマを選んで参加します。
  • 「理数系人材育成コンソーシアム」:関係校の理科・数学教員、大学教授等で構成。生徒が活動の成果をまとめ発表することで、受信校の生徒同士の相互評価や大学教授等からの評価・助言を受け、次の探究につなげます。

連携機関として、北海道大学、北海道教育大学、SBC&S、ZVC、neat、パナソニック等が挙げられています。

KPIは「受信校から理系学部へ進学した生徒の割合 9.3%→30%→40%」

この計画で目を引くのは、数値目標がはっきり書かれていることです。

指標 現状 令和10年度 令和13年度
受信校から大学の理系学部へ進学した生徒の割合 9.3% 30% 40%
出典:文部科学省「先導校等の取組例2」p.9(北海道有朋高等学校)

現状9.3%を、3年後に30%、6年後に40%。3倍以上に引き上げる目標です。「現状値→中間目標→長期目標」の3点セットで置くのが国の示している型で、成果指標をこれから考える他校にとっても、お手本になりそうな書き方です。

生徒の1日:夕張高校3年Aさんの時間割

資料には、協力校(受信校)の生徒の1日が具体例として示されています。挙げられているのは夕張高等学校 普通科3年Aさんです。

時刻 内容
9:00 「英語コミュニケーションⅢ」
10:00 「政治・経済」
11:00 遠隔授業「イノベーター物理」において、理系大学進学に必要な科目を学ぶ
12:00 遠隔授業「古典探究」
13:30 遠隔授業「イノベーター数学Ⅲ」において、理系大学進学に必要な科目を学ぶ
14:30 「総合的な探究の時間」
出典:文部科学省「先導校等の取組例2」p.9

1日6コマのうち3コマが遠隔授業。これが、この計画が想定している現場のリアリティです。自校の教員が担当するコマと、有朋から配信されるコマが、同じ時間割のなかに並びます。協力校にとって遠隔授業は「特別なイベント」ではなく、日常の時間割そのものになるということです。

他校への普及方策は「遠隔授業セット(T-baseモデル)」

普及方策として、遠隔配信の標準化に向け、マニュアル等をパッケージ化した「遠隔授業セット(T-baseモデル)」を開発すると明記されています。

ここに、この事業の狙いがよく表れていると思います。成果物は授業そのものではなく、「他の地域でも再現できる型」です。北海道という国内最大の広域分散地域で成立したモデルは、そのまま他の道府県に移植できる。域内普及にとどまらない射程を持った計画だと言えます。

岩見沢農業高校の事業計画で分かっていること

一方、岩見沢農業高校については、公表されている情報が明らかに少ないのが実情です。

文部科学省の「先導校等の取組例」に掲載されているのは全国16校で、その顔ぶれは浜松工業・焼津水産・魚津・静岡中央(静岡・富山)、黒沢尻工業・和歌山工業・今治工業・農林・都城農業・長崎鶴洋・大垣北・高知小津・北海道有朋・奥能登未来創造センター・小豆島中央・能代です。岩見沢農業高校は含まれていません

したがって現時点で確認できるのは、採択結果一覧に記載された次の内容にとどまります。

項目 内容
先導校等名 北海道岩見沢農業高等学校
学科等 全日制/農業科
事業計画名 持続可能な農林業及び地域産業を創造する農林業イノベーション人材の育成
上限額 15.0億円
類型 類型1(アドバンスト・エッセンシャルワーカー等育成支援)
学力向上・学習支援 大学生や専門家等による学習支援の取組
協力校 帯広農業(農業)、旭川農業(農業)、大野農業(農業)、札幌工業(工業)、札幌東商業(商業)、厚岸翔洋(水産)、美唄聖華(看護)

全国の農業科の先導校は14学科。そのなかで15.0億円という額は、山形県立新庄神室産業高校と並ぶ水準です。「農林業」と明記している点——農業ではなく林業を含めている点——は、北海道の産業構造を踏まえた特徴と読めます。

岩見沢農業高校の関係者にとっては、詳細が公表されていない今こそ、道教委の発表を待つ側ではなく、計画を語る側に回れる時期だとも言えます。

採択後の3年間で、現場に何が起きるのか

お金の主語は「道」であって「学校」ではない

最初に、誤解されやすい点を整理しておきます。15.0億円・21.9億円は、両校の口座に振り込まれるお金ではありません。

この事業で国が財政支援する仕組みは、都道府県ごとに設置される基金です。したがって北海道の場合、基金は道に置かれ、申請の主語も執行の主語も北海道(道教委)になります。文部科学省の申請様式が「申請書事業計画書(都道府県)」と「申請書事業計画書(各拠点)」の2階建てになっているのは、この構造を反映したものです。学校は「拠点」として計画を担う立場であり、財布を持つ立場ではありません。

そのうえで、数字の読み方を3つ。

  • 15.0億円・21.9億円はいずれも「上限額」であって、確定額ではありません。実際の交付額は交付申請と実績に基づいて決まります。「21.9億円もらえた」ではなく「21.9億円まで使える計画が認められた」が正確です。
  • 補助率は10分の10(全額国費)、支援期間は3年程度。財源は令和7年度補正予算の2,955億円(促進事業2,950億円+伴走支援事業5億円)です。道費の持ち出しを前提とした事業ではありません。
  • ルールブックは2冊。交付要綱と管理運営要領が文部科学省「高等学校教育改革促進基金」のページで公開されています。現場が最初に開くことになるのは、対象経費の線引き・事業計画の変更手続き・実績報告のあたりだと思います。

協力校にとって効いてくるのは、この3年間、自校の予算とは別の財源で動く取組が時間割の中に入ってくるという点です。お金の流れは道と拠点校の側にありますが、時間と労力は協力校側にも確実に発生します。

協力校65校は、何をすることになるのか

これは、全国のどの記事も書いていない論点です。世の中の解説はすべて「拠点校」目線で書かれていますが、北海道で圧倒的に人数が多いのは、協力校の先生です。

公表資料から読み取れる範囲で、協力校に発生することを整理します。

  • 時間割に遠隔授業のコマが入る。夕張高校の例では1日6コマ中3コマ。自校の教育課程の編成そのものに影響します。
  • 受信側の授業運営。誰が教室にいるのか、機器のトラブルに誰が対応するのか、評価は誰がどう行うのか。
  • 「イノベーター理科・数学・情報」は学校設定科目です。受信校側での単位認定の扱いも、整理が要りそうです。
  • 理数系人材育成コンソーシアムへの参加。関係校の理科・数学教員が構成員に位置づけられています。自校の教員が、有朋や大学教授と同じ場で生徒の成果を評価する側に回ります。
  • 「n.e.x.t.ゼミ」への生徒の送り出し。長期休業中のオンラインゼミであり、生徒への周知と参加の後押しは受信校側の仕事になります。
  • KPIの当事者になる。「受信校から理系学部へ進学した生徒の割合 9.3%→30%」の分母は受信校の生徒です。この数字は有朋の努力だけでは動きません。協力校の進路指導が、そのまま指標に反映されます。

最後の点は、地味ですが大きいはずです。協力校は「協力する立場」というより、成果指標の共同責任者に近い。65校それぞれの進路指導の積み上げが、9.3%を30%にできるかを決めます。

成果指標をどう置くか(岩見沢農業の場合)

有朋高校には明確なKPIがありますが、岩見沢農業高校の指標は公表されていません。類型1・農業分野の性格から、候補として考えられるのは次のような指標です。

  • 農業関連分野への就職率・就農率(=「農林業イノベーション人材」の直接指標)
  • 農業系大学・農業大学校への進学者数
  • スマート農業関連の資格取得者数
  • 協力校7校との合同での取組の実施回数と参加生徒数
  • 「地域産業」を掲げている以上、農業以外(工業・商業・水産・看護)の協力校との連携から生まれた成果

ここでも、有朋の「現状値→中間目標→長期目標」という型が参考になりそうです。3年目に「向上した」と言うためには、1年目の数字が要ります。事業開始は令和8年度、つまり今年度。ベースラインを測るなら、いまです。

遠隔ならではの実務論点

「遠隔授業を広げます」と一行で書かれた計画も、実際に回すとなると、こんな論点が出てきます。

  • 時間割の同期。65校の時程がバラバラでは配信が成立しません。T-baseの32校でも調整の蓄積があるはずですが、倍増すれば難度は上がります。
  • 教員の配置。配信側(有朋)に何人必要なのか。受信側に立ち会う教員の校務分掌はどうなるのか。
  • 通信環境と機器の保守。離島・郡部を含む65校の環境を、誰がどう維持するのか。
  • 3年後の運用費。国の補助は令和8〜10年度の3年間です。機器を入れることはできても、それを動かし続ける財源は、この事業には含まれていません。だからこそ「遠隔授業セット(T-baseモデル)」のパッケージ化=標準化によるコスト低減が、普及方策であると同時に、事業終了後の存続戦略になります。

続報を待つあいだに、いま確認できること

この記事で一次資料をここまで細かく追ったのには、理由があります。

採択結果が公表されたのは2026年6月29日、事業が動き出すのは令和8年度からです。制度の詳細や道内での進め方は、これから北海道教育委員会を通じて順次示されていくことになります。2026年7月14日時点では、道教委のお知らせ一覧、高校教育課のページ、T-baseの公式サイト、両校の学校サイトのいずれにも、まだ続報は掲載されていません。大きな事業ほど、庁内や関係校との調整を経てから案内が出るのが通例ですから、これは順当な流れだと思います。

ただ、協力校となった65校にとっては、自校が名前を連ねているという事実そのものが、今後の教育課程や進路指導の見通しに関わってきます。そしてその事実は、続報を待たなくても、いま文部科学省のPDFを開けば確認できます。本記事が、正式な案内が届くまでの間の手がかりになれば幸いです

よくある質問(FAQ)

Q. 北海道のネクストハイスクール構想の拠点校はどこですか?

A. 北海道岩見沢農業高等学校(15.0億円、類型1)と北海道有朋高等学校(21.9億円、類型2+類型3)の2校です。2026年6月29日に文部科学省が公表した採択結果(第1回から第3回申請分まで)に記載されています。

Q. 自分の学校が協力校かどうか、どこで確認できますか?

A. 文部科学省の採択結果一覧PDFの後半6ページ(p.10〜15)が「協力校一覧」です。北海道分は本記事にも全件掲載しています。岩見沢農業が7校、有朋が65校です。

Q. 有朋高校の協力校65校は全国で多いほうですか?

A. 全国の先導校のなかで最多です。協力校一覧6ページすべてを確認したところ、次点は静岡県立静岡中央高校の約29校で、有朋高校の65校は2倍以上の規模です。

Q. なぜ有朋高校だけ2つの類型に採択されているのですか?

A. 事業計画名が「多様な学習ニーズに対応した教育ネットワークモデルの構築」(類型3)と「これからの経済・社会の発展につなぐことのできる理数的素養を有するイノベーション人材の育成」(類型2)の2本立てになっており、ひとつの遠隔ネットワークの上で両方を実現する設計だからです。この結果、北海道は2校で3類型すべてをカバーしています。

Q. T-baseとN-E.X.T.ハイスクール構想はどういう関係ですか?

A. T-baseは有朋高校に令和3年4月に開設された遠隔授業配信センターで、令和7年度時点の受信校は32校(地域連携校30校、離島の高校2校)です。今回のN-E.X.T.事業では有朋高校の協力校が65校となっており、対象校がほぼ倍増する形になります。なお道教委のページやT-base公式サイトには、現時点でN-E.X.T.への言及はありません。

Q. 「イノベーター理科・数学・情報」とは何ですか?

A. 有朋高校が新設する学校設定科目です。「イノベーター理科」「イノベーター数学」では物理や数学Ⅲ等の内容に加え、外部の大学教員や産業界の技術者(サイエンスエキスパート)から実社会や先端技術と結び付けた内容を学びます。「イノベーター情報」では情報Ⅰの内容に加え、データサイエンスや生成AIの活用を取り入れます。いずれも遠隔授業で配信されます。

Q. 岩見沢農業高校の事業内容の詳細はどこで分かりますか?

A. 現時点で公表されているのは、採択結果一覧に記載された事業計画名・上限額・類型・協力校までです。文部科学省の「先導校等の取組例」は全国16校を紹介した資料で、岩見沢農業高校のページはそこに含まれていません。詳しい内容は、今後の北海道教育委員会の案内で示されていくものと思われます。

Q. 15.0億円・21.9億円は学校が自由に使えるお金ですか?

A. いいえ。両校の口座に振り込まれるお金ではありません。基金は北海道に設置され、申請も執行も道(道教委)が主語になります。学校は「拠点」として計画を担う立場です。また両方の金額とも「上限額」であり、「21.9億円もらえた」ではなく「21.9億円まで使える計画が認められた」と理解するのが正確です。

まとめ

北海道のネクストハイスクール構想の拠点校は、岩見沢農業高校(15.0億円・類型1)と有朋高校(21.9億円・類型2+3)の2校です。ただし、この採択の本質は「2校」という数字にはありません。

  1. 実質的な当事者は72校。岩見沢農業の協力校7校と有朋の協力校65校を含めると、全道70校以上がこの事業に関わります。有朋の65校は全国最多で、次点の約2倍です。
  2. これはT-baseの続きである。令和3年開設のT-baseの受信校32校が、協力校65校へと倍増します。ゼロからのネットワーク構築ではなく、5年の実績を土台にした拡張と機能追加です。
  3. 目標は数字で置かれている。「受信校から理系学部へ進学した生徒の割合 9.3%→30%(R10)→40%(R13)」。そしてこの分母は受信校の生徒であり、65校の進路指導が指標を動かします
  4. 成果物は「型」である。普及方策は「遠隔授業セット(T-baseモデル)」のパッケージ化。国内最大の広域分散地域で成立したモデルは、他の道府県にも移植できます。

道内向けの続報は、これから順次示されていくはずです。それを待つあいだも、協力校65校の先生は、文部科学省のPDFの後半6ページで自校の名前を確認できます。

事業期間は令和8年度から。ベースラインの数字を測るなら、今です。

参考・出典

※本記事は2026年7月14日時点で公表されている資料に基づいて作成しています。北海道教育委員会からの公式発表がなされた場合、内容が更新・補足される可能性があります。

清水明夫

この記事を書いたのは…

LAMPS株式会社 取締役 清水明夫

1984年群馬県生まれ。早稲田大学教育学部在学中に、国内初となるシェアハウス運営会社を起業。2013年より地元群馬県に戻り地域活動を開始。2015年に高崎市議会議員選挙に初出馬、2位当選。2018年に開催した5000人規模の野外音楽フェスでは、一夜にして4000万円の負債を負い、うつ病に。多くの挑戦の中でたくさんの仲間ができ、2019年に出馬した2度目の選挙では、歴代最多候補者数の激戦の中トップ当選。2023年4月、後継候補を当選させた後、議員を引退。これまで13社の創業と3社の譲渡、400件ほどの事業開発に取り組んだ経験を活かし、現在は複数の会社経営、企業コンサルティング、まちづくり活動などに従事する。


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